全ての提案を聞くことで「宝物」を見つける。民間との信頼構築のススメ。三重・四日市市長【第24回GR勉強会】

“官民連携”という言葉が当たり前になりつつある現代。他方で、よく聞く言葉ではあるものの行政側がやるべきコトや取り組み方をイメージしづらいのも事実。

「官民連携の肝は“民間と良い信頼関係を築く”ことだ」

と断言する市長がいます。三重県四日市市の森 智広(もりともひろ)市長です。

森市長は、公認会計士として培った会計や財務の知識を活かして行財政改革にも力を入れています。市議を2期務めた後に市長選挙で当選。市長に就任してからの6年で市政の課題を民間企業の力も借りながら解決に導いてきました。

行政と民間は切っても切れない関係だからこそ、信頼関係を築くことが重要だと森市長は語ります。第24回のGR勉強会では森市長に「官民連携に臨む行政側の姿勢」についてお聞きしました。

イメージは時代とともに変化する。市民の姿勢によって変わりつつある四日市

四日市市は商工業の街として知られ、石油コンビナートを臨む景色は人気の観光スポットの一つです。昭和の時代には大気汚染の問題も起きましたが、市民と企業の努力によって四日市は自然と調和した街を実現しています。

また、令和5年2月に「ゼロカーボンシティ宣言」を行い、2050年までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指しています。

「環境と経済は相反する」と考えられていた時代もありました。しかしカーボンニュートラルに取り組まない企業へは投資が集まらないという世界情勢から民間側も積極的に取り組むようになってきています。

同時に市民側の変化を森市長は目にしたと言います。それは、四日市ナンバープレートのデザインを高校生から募集した際の出来事。90個のデザインの中に、こにゅうどう(四日市市の公式キャラクター)と工場の煙突をセットにしたものがありました。「高校生にとって工場は四日市にとって前向きなイメージ」なんだということを知ったとのこと。

市民が、排除の論理に走らず企業と一緒になって解決する姿勢で環境問題に取り組んできたからこそ芽生えたイメージであり、その努力によって四日市は前に進んでいると言えます。

官民連携によって突き進む「中心市街地再開発プロジェクト」

勉強会後半では、四日市市で進んでいる「中心市街地再開発プロジェクト」における官民連携の具体例とその効果を教えていただきました。 

四日市市には、近鉄四日市駅とJR四日市駅があり、市役所はそのほぼ真ん中に位置しています。約1.2km離れた場所に位置する二つの駅は、メインストリートの「中央通り」で結ばれ、市民のとって交通の要と言えます。

しかし、賑わいのある近鉄側に比べて「JR側は少し寂しい様子」と言われており、森市長は市にとって解決すべき大きな課題だと断言します。

そこで四日市市では、より一層の活力を生み出すべく「中心市街地再開発プロジェクト」を開始しました。大学を含めた施設の誘致も検討しており、エリア全体を盛り上げる狙いがあります。

プロジェクトの中でも、バスターミナル「バスタ四日市」の建設などバス交通網の整理は、最も注目を集める取り組みです。「バスタ」と名の付く施設は東京都新宿区の「バスタ新宿」のみで、日本では二つ目の施設になります。

加えて、中央通りの車線を減らして歩行スペースを広げるなど、ウォーカブルな空間の整備も計画されています。森市長は「車社会の地方にとって、車線を減らすことは大きなリスクではないか」と危惧していたそうです。しかし、兵庫県姫路市の駅前再開発など、他の自治体の取り組みや事例をくまなく確認したおかげで、不安材料は大きく減らすことができたとのこと。

なによりも強調すべきは、この再開発プロジェクトは民間の協力なくして実現できない取り組みであること。具体例として、株式会社FIXERの協力でメタバース空間に再開発後の街を作り上げたことがあげられます。市民がVRゴーグルをつけてその世界で歩くことによって具体的なビジョンも伝えることができました。

他にも、地元企業によるローカル5G整備など、行政と民間がタッグを組んで再開発事業に取り組んでいます。

官民連携では「どこに宝物が転がっているか分からない」という思考が重要

勉強会の最後には、官民連携を進めるうえで森市長が最も重要にしていることをお聞きすることができました。

「どこに宝物が転がっているか分からないのが民間の提案。だからこそ、全ての提案を聞きに行く」

行政だけでは思いつかないアイディアを民間なら持っている可能性がある。そんな宝物を見つけるために森市長は全ての提案を聞きに行くそうです。

特に再開発事業は、一度実行してしまうと後戻りができません。良いアイディアを知らずに実行してしまい、もっと良い機会を失う方がリスク。だからこそ、まずは聞いてみる。

森市長のそうした姿勢が民間と良いリレーションを育み、四日市市は官民連携の好事例を生み出していると言えそうです。

その他にも四日市市における官民連携の好事例をYouTubeで公開しています。ぜひ、ご覧ください。

元気もりもり!31万人元気都市四日市の実現に向けて【第24回GR勉強会】主催:(一社)日本GR協会