激レアさんを、つかまえた!~「高校生が主役の地方創生」誕生物語【第1回GRフロントランナー】

少子高齢化が全国で加速している日本。

「地元の高校に人が集まらない」

「若者が地元から出て行って戻ってこない」

こんな課題は全国多くの地域が抱えているのではないでしょうか。

海士町のPRサイトより

今回の話の舞台は島根県海士町。本土からフェリーでおよそ3時間の中ノ島の自治体です。1950年には7000人近い人口でしたが、いまは約2300人が暮らしています。

島には唯一の県立高校である、隠岐島前高校があります。

この隠岐島前高校、かつては存続の危機を迎えていましたが「島留学」で全国や世界各国から生徒を募集したことで生徒数はV字回復し、全国から注目を集めています。

島根県立隠岐島前高校のHPより

そしてその取り組みは島根県全体に広がり、「高校を核とした地方創生」の取り組みに発展しています。

日本GR協会では、これまで自治体の首長から官民連携の取り組みについて聞く勉強会をオンラインで開催してきました。こちらはどちらかというとトップダウン的な事例ですが、官民の連携がボトムアップ的に広がっていったケースも紹介しようと、新しい勉強会を立ち上げました!それが、「GRフロントランナー」です。今回は3人のフロントランナーが登場します。

フロントランナー①「俺は教育で命を燃やす!」印税で学校をつくった激レアさん          

一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事 岩本悠さん 

東京生まれ、東京育ちの岩本さん。学生時代の20歳の時大学を1年間休学しアジア・アフリカ20ヵ国の地域開発の現場を見て回る、“流学”をしました。この体験から、教育による持続可能な社会づくりをしたいと思うようになりました。ソニーに就職し、人材育成や組織開発、社会貢献活動事業を行う傍ら、国内の学校で出前授業を行っていました。著書「流学日記」の印税でアフガニスタンに学校をつくった“激レアさん”でもあります。

フロントランナー② 「とにかく海士町に来なさい!」激レアさんを口説いた財政課長 

島根県隠岐郡 海士町 副町長 吉元操 さん

吉元さんは2004年、海士町役場の財政課長としてまちづくり計画を作っていました。その中で課題として取り上げられていたのが隠岐島前高校でした。当時、島前高校は生徒の減少が止まらず、「このままでは廃校になるかも」と危機感を持っていたのです。

その時、たまたま海士町の中学校に出前授業でやってきたのが、当時26歳の岩本さんでした。

「なんだこの猫の恰好をした若者は・・・」

岩本さんは子ども達を和ませるために猫の恰好をしてきたのでした。吉元課長はカルチャーショックを受けながらも岩本さんの話に引き込まれます。夜の懇親会で、岩本さんの教育に対する考え方に益々共感した吉元課長。「こっちに来て一緒にやらないか」と声をかけます。何か、仕事や役職を用意してスカウトしたのかというと・・・。

吉元課長(当時)「来てから、一緒に考えようか」

(一同爆笑)

岩本さんは、元々は国内ではなく発展途上国に行って教育支援をしようと考えていたそうです。しかし海士町に来て、こう考えます。「日本の中にこんなに課題がたくさん詰まっているのに、それさえ解決できずによその国で『お役に立ちます』なんて言えない・・・」。そして「ここは人口減少の課題の最先端だ。ここで教育支援や地域づくりをできれば他の地域にスケールアップできるだろう」と考え、ソニーを辞め、半年後に海士町に移住します。

そして、高校の危機を改革の好機と捉え、県立高校であるためにまちと接点があまり無かった島前高校をまちの拠点にしようと考えました。「ここが地域の最高学府で最後の出口。ここから地域づくりや人づくりにつなげていこう」。岩本さんは地域と高校をつなぐコーディネーターとして1年間かけてワークショップを行い、ビジョン作りを行いました。そして、島全体が学校、住民も先生と捉え、地域課題を「教材」としての解決策を考えるプロジェクトをつくります。

さらに、子ども達の関係性の固定化や価値観の同質化を防ぐために「島留学」の制度をつくりました。

こうした取り組みにより、生徒の数はV字回復し、「この地域で学ばせたい」と移住してくる家族も生まれました。また、卒業生のUターン率も徐々に高まってきているということです。ここまでですと、島根県海士町の高校を核とした地方創生の良い話。実はいま、この事例は県全体に、そして全国に広がっているのです。

フロントランナー③「ロジック変えて教育改革」島根県の挑戦 

島根県教育庁教育指導課地域教育推進室 中村和磨室長

島根県教育庁はいま、県立隠岐島前高校の取り組みを県全体に広げようとしています。ただ、これには様々な障害がありました。高校生の進路について教育委員会と地元では認識に大きな隔たりがあると、島根県教育庁の中村さんは語ります。地元の住民は「高校卒業の進路は地元に誘導すべき」と考えますが、教員たちは「最終的には進路や就職先を決めるのは生徒本人」と考えるというのです。

そこで、島根県は高校教育に「高校を核とした地方創生」というロジックを2011年から取り入れました。高校と地域をつなぎ、高校の魅力を増すことで、地域留学も含め人が集まる。地域課題を教材とすることで地域への肯定感も高まり、地域人材も増えていくという考え方です。

海士町で岩本さんが高校と地域をつなぐコーディネーターをやったように、各高校に配属するコーディネーターを岩本さんの協力を得ながら育成しています。地方創生というロジックを取り入れたことで、これまでの教育現場と地域の溝を乗り越えようとしているのです。

さらに、高校生を主役とした地方創生の取り組みは全国に広がりをみせています。

岩本さんは財団法人を立ち上げ、全国の高校に「地域みらい留学」する仕組みを作っています。この仕組みに賛同している高校は全国に90校以上あります。

民間と市町村、そして都道府県との関係にはそれぞれの思惑があります。岩本さんは「最初は県や県教委との戦いだった」と語ります。このような違いを乗り越え、活力ある教育、活力ある地域づくりを進めていくにはそれぞれにどのようなマインドセットが必要なのか。続きはYouTubeでご覧ください!

官民連携で教育改革から地域の魅力化へ。全国まで波及した先進事例をご紹介 ~島根県立隠岐島前高校の「島留学(地域みらい留学)」の挑戦~【第1回GRフロントランナー】

モデレーターは元横須賀市長で、日本GR協会代表理事の吉田雄人。官民連携を進めるための「民間の基礎自治体への入り方」「民間を受け入れる際の基礎自治体のマインドセット」「県と町の立場の違い」などの観点から3者にズバリ切り込みます!

こんな人におススメ!

  • 「地元の高校に人が集まらない」「若者が地元から出て行って戻ってこない」と悩む自治体関係者・教育関係者
  • 民間のノウハウを地域に展開したいが、入って行き方がわからない事業者

第22回GR勉強会のお知らせ

日本GR協会では、本記事でご紹介した「GRフロントランナー」のほか、全国の市長をお迎えしてお話をお聞きする「GR勉強会」を毎月開催しています。
次回、第22回勉強会でも桑名市の伊藤市長をお招きしてお話をお伺いします。
ぜひ、ご参加ください!


【第22回GR勉強会】
なぜ公民連携は失敗するのか 
~桑名市が明かす公民連携の成功の鍵~

■ 日時  8月29日(月)19時~20時
■ ゲスト 三重県桑名市・ 伊藤徳宇市長
■ モデレーター 日本GR協会 代表理事 吉田 雄人(前 横須賀市長)
■ 使用ツール:YouTubeによるライブ配信
 ※ お申し込みいただいた方に、視聴URLを後日お送りいたします。
■ 参加費:無料
■ 詳細・お申し込み:https://graj022seminar.peatix.com/