持留 英樹:GR Value インタビュー
GRオフィサー
YOUは何しにGR協会に?
吉田: 最初に出会ったきっかけは、共通の知人と宮崎県と熊本県の地域活性の現場を視察した時でしたよね。ああいう出会いって、普通はそこで終わっちゃうことが多いと思うんですけど、そこからGR協会に関わろうと思ってくれた理由って、何だったの?
持留: あの時は、KBC九州朝日放送(本社:福岡市)のグループベンチャーのGlocalKを立ち上げて2年目ぐらいでした。KBCでは2019年から「ふるさとWish」という地域共創プロジェクトを展開しています。GlocalKはその流れで地域の課題解決に貢献するというミッションを掲げて2020年に誕生しました。設立当初は明確な事業ドメインが定まっておらず、主に自治体のプロモーション系の案件を中心に受けていました。しかし、明確なビジョンやコンセプトがないまま依頼されることが多く「これでいいのか?」と悩んでいた時期でした。「もっと上流の企画から一緒に考えることができればいいものが生まれるのに」と。そんなときに吉田さんと出会ったんです。自治体の首長経験がある方と深く話すのは初めてで、「自治体の考え方を深く理解することで、まちの戦略づくりから一緒に考える立場になれるかもしれない」と考えたんです。
吉田:なるほどね。「ホームページ制作」とか「動画作成」とかは事業として予算化しやすいからね。でも、そこまでに至るプロセスが本当は大事だからね。
とはいえ、外部からそのプロセスに関わるのって大変だと思うけど、 日本GR協会にオフィサーとして参加してから、仕事はどう変わったの?
GR協会に関わって何が変わった?
持留: プロモーション受託から、自治体のPR戦略や政策を一緒に考えるコンサルティング事業に変わりました。福岡県の福岡市と北九州市の中間に宗像市という自治体があります。宗像市の課題は「宗像といえばこれ!」というようなブランドがないことです。宗像は農業や水産業が本当に豊かです。道の駅むなかたの売上は九州ナンバーワンでいつも大賑わい。水産物はイカやフグが有名です。でもイカは呼子、フグは下関と、最初に想起される地域は別なんです。そこで、「移住・定住」を軸に据えて、どんな人にどんな価値を届けるのか、職員たちと丁寧に設計していきました。
吉田:宗像市の職員も一緒にやっていこう、っていう姿勢があったんだね。 具体的には、どんなターゲットを設定したの?
持留: 福岡市内に住む共働きの子育て世帯です。特に未就学児がいる家庭。都市部で移住を検討している人たちは、自然豊かな場所でのびのび子育てしたいと思う一方で、教育レベルが下がるのは嫌だという本音があります。宗像市は、子どものキャリア教育で国から表彰されるなど教育に力を入れています。小学校では給食を自校で作り、地産地消と食育に力を入れています。そこで移住者向けのシティプロモーションでは「教育×食育」を前面に打ち出し、宗像市の魅力を整理しました。いまは各部のビジョンやコンセプトをワークショップでつくりあげていく組織開発も支援しています。
吉田: 自治体の中での仕事って、職員がいろんなレイヤーに分かれてるから、難しいところがあるよね。成功するケースでは、誰と一緒に進めることが多いの??
持留: 主に課長や係長クラスの方と一緒に取り組みます。大切にしていることが2つあります。1つは担当者に熱量があるか。もうひとつは市長や副市長など幹部に説明し承認を得ること。この2つがそろっていないと、プロジェクトはなかなか前に進まないと思います。自治体が前に進むためには現場の熱量だけではなくて、上層部も同時に動かしていかなくてはいけない。逆に上層部の熱量だけでも物事は前に進まない。これもGR協会での活動で学んだことです。GRはガバメントリレーションズの略ですよね。行政と良い関係を構築すること。そのために行政、特に基礎自治体の首長や職員が日々の仕事でどのようなことに悩み、どうすれば力を発揮できるのか相手を理解することがとても大事だと考えています。民間から見ると、自治体って融通が利かないとか、スピード感がないとか、疑問に思うことがあると思うんです。予算編成のスケジュールがガチっと決まっていて、秋に提案に行っても「来年度にあらためて提案に来てください」となってしまいます。来年度に提案が通っても予算化され動き出すのはさらに1年後ですから、スタートアップは愕然としますよね(笑)。でもそれにはそれなりの理由がある。そこを理解した上で、相手が最も情報がほしいときを選んで対話したり、「じゃあこうしませんか?」と第三の選択肢を提案することで動き出すこともある。GR協会で活動するとこのような「対話を通じた合意形成の糸口」をつかむのが上手になると思います。
吉田: じゃあ、ズバリGR協会に参画して、仕事でためになったことはなに?。
持留: 大きく3つあります。
吉田:3つもあるんだ! さすがGR協会!(笑)
持留: ひとつ目は、先ほど紹介したような行政の「お作法」や「仕組み」が学べること。行政の予算の流れや資料のつくり方を理解することで行政の立場を理解した提案ができますし、民間の視点から「変わるべきところは変わるべきでは」と単刀直入に進言することも厭わなくなりました。官民どちらもお互いを理解して前に進まなければいけません。
ふたつ目は、GRオフィサー同士のネットワークです。プロボノで参加してるメンバーは30〜40代の実務世代が多く、それぞれが専門性を持ち、社会的な課題意識も強い。そういう仲間たちと学び合うことで、自分の強みや弱みを客観視することができます。
三つ目は、実に様々な人に出会え、地域活性の事例を知ることができることです。例えば自治体DXの勉強会のモデレーターで都庁の担当者にインタビューさせてもらいました。政策の最前線にいる人たちと直接話せる機会があることで、視野が広がります。GRサミットやアワードでは全国の官民連携事例に触れることで刺激を受けますね。
地方の方や若者こそGR協会へ!
吉田:なるほどね。今後は、日本GR協会ではどういう活動にコミットしていきたいの?
持留:コミュニティづくりですね。私は仕事では九州のメディアグループの一員として地域活性に関わっていますが、地域活性の前に人を活性化することが何より大事だと考えています。地方を何とかしたいと思っている若者が、GRという考え方と解決方法を知り、同じような志を持った仲間と出会いながら熱量を高めていく。そういう地方の若者が挑戦するきっかけづくりをできたらいいなと思っています。
吉田: 具体的にはどんな人に参加してほしい?
持留: 「悶々としている人」です。地域に関わってみたいけど一歩が踏み出せない人。社会に対して何かおかしいと思っているけれど、何からはじめたらいいか方法が分からない人。そして、上の世代に押さえつけられていると感じている人。かつては、社会の仕組みをつくったり、ルールをつくったりするのは政治行政がやることと思われていたと思います。しかしインターネットの誕生で誰もがメディアになりました。ただ反発するだけよりも、「こちらのほうが未来は明るいのでは」と照らすことで仲間をつくり世論を味方につけやすい世の中になったと思います。行政も自分たちだけで地域課題を解決することが難しくなってきていて、民間や市民との連携を望んでいる。これは地方の閉塞感に悩む方や若者にとって大きなチャンスだと思っていて、ぜひGR協会に関わることできっかけを得てほしいなと思っています。実際、福岡にいる私を含め地方から運営に参画するメンバーのほうが多いですし、20代のオフィサーが大活躍していますよ。
吉田:まさに、自分が悶々としてたわけだからね。ぜひ仲間づくり、していきたいね。
