【私とGR】「政治って、遠いんだ」——10年、若者と政治の間に立ち続けて

「政治って、遠いんだ」——大学1年の春、友人がぽつりと漏らした一言に驚いたのを今でも覚えています。それから10年、私はその「距離」こそが、社会課題を解決できない構造的な要因のひとつではないかと考え続けてきました。

2015年、大阪で大学生活をスタートしました。身内に地方議員がいたこともあり、政治行政との関わりは私の生活にもとからありました。入学と同時に政治家のもとでインターンを始めたことで、「行政はどう動き、誰が何を決めているのか」を肌感覚で学ぶ機会を得ました。社会の課題は、誰かが声を上げ、政治行政との関係をつくることで初めて動き出す——そのことを、現場で体感した時期でした。

だからこそ、その回路から若い世代が切り離されている現実には強い違和感がありました。20代・30代の投票率が祖父母世代を大きく下回るということは、社会課題の当事者である若者の声が、政策形成の場に届いていないということでもあります。「若者と政治家の距離を縮めれば、その関係が変わるはず」——そう信じて活動を始めたのが、NPO法人ドットジェイピーでした。1996年から続く「議員インターンシップ」は、春休み・夏休みの2か月間、大学生が現役議員のもとで活動するプログラムです。

ところが、すぐに壁にぶつかります。普通の大学生にとって政治は「自分ごと」ではなく、行政との関係構築など想像の外にある話だったのです。それでも工夫を重ねるなかで、関心を持ってくれる学生は少しずつ増えました。大学4年間で累計450〜500人のインターン生と関わり、受け入れてくださった議員の方々とも多くの接点が生まれました。あの時の出会いが、今の自分を支えてくれています。

あるインターン生の言葉が、今も忘れられません。「政治にこんなにコストがかかるとは思わなかった」。チラシを一軒ずつ投函し、早朝の駅に立ち、市民の声を拾い続ける議員の姿を見て、彼のなかの「政治家像」が書き換わった瞬間でした。それは同時に、Government Relationsの本質——社会課題を解決するために、どれほどの関係構築と継続的な対話が必要か——を、身をもって理解した瞬間でもあったと思います。

受け入れ議員の方からも、忘れられない言葉を頂きました。「インターンに来る子はいつも18〜22歳。自分だけが歳をとっていく。毎年やってくる若者に負けないよう、誰よりも勉強し続けなければならない」。政治行政との関係は、一方通行ではなく、双方が変わり続けることで成り立つ——この方の言葉は、そのことを静かに教えてくれていました。

※総務省 国政選挙の年代別投票率の推移について

インターン前後のアンケートでは、「必ず投票に行く」と答える割合が10〜20ポイント上昇します。小さな変化の積み重ねが、確かに若年投票率に寄与している実感はあります。一方で、直近の国政選挙でも20代の投票率は他世代と比べて最も低く、課題は残ったままです。

「GRオフィサー」という肩書きは正直、自分には少し大きすぎる言葉だと感じていました。けれど振り返ってみれば、若者と政治家をつなぎ、対話の場をつくり、社会課題に向き合うこの10年は、まさにGRの実践そのものだったのかもしれません。「民間企業と政治行政」という王道のGRだけでなく、市民・若者の側から政治との関係を編み直していく——そんなボトムアップ型のGRもきっとある。そう考えると、ドットジェイピーで出会った仲間たちは、みな自分なりの形でGRを実践してきた人たちでした。

これからも一実践者として、若者と政治の距離を縮める活動を続けていきます。次回のバトンは、ビートさんにお渡しします。ビートさんならではの「私とGR」を、私自身も楽しみにしています。

投稿者プロフィール

中山 智貴
中山 智貴(一社)日本GR協会 事務局長
1996年9月生まれ。兵庫県出身。高校卒業後、関西大学(大阪府)に進学。学生時代は学業と並行して複数のNPOにおいて社会課題解決に向けた取り組みに挑戦。政治家・NPO・海外公的機関でのインターンシップのコーディネートや、無料塾の運営などに携わり、現在も社会人として運営に参画している。

新卒で選挙コンサルティング専門会社である株式会社ダイアログに入社。その後、NPO職員を経て、イチニ株式会社(選挙情報プラットフォーム「選挙ドットコム」を運営)に転職。主に公式YouTubeチャンネルのディレクションを担当した。2025年12月より、合同会社STARSにて選挙プランナーとして活動を開始。

あらゆる政治的スタンスを尊重しつつ挑戦者に寄り添い、データに基づく戦略立案から住民との対話の設計まで、よりよい政治コミュニケーションのあり方を探求している。特に、選挙・政策分野におけるデジタルメディア活用や、若年層とのコミュニケーション設計を強みとしている。

一般社団法人日本GR協会には、地域課題解決に資する良質かつ戦略的な手法を学び、広めることを目的に2021年より参画。協会では、GRサミット/アワードの運営、GR人材育成ゼミ、GR勉強会などを担当。2025年に事務局長に就任。

兵庫県上郡町出身
関西大学政策創造学部卒業
https://e-stars.co.jp/