【私とGR】官と民の境界を越えた「共創」を目指して——社会課題解決を「点で終わらせない」ために
「素晴らしい取り組みなのに、なぜ持続的な取り組みとして続けるのがこんなに難しいんだろう」
社会課題の解決に向けて、志を持つ起業家やNPO・地域で奮闘する人々を間近で見たり、自分自身も現場で手を動かしたりする中で、私はずっとこの問いを感じてきました。
私自身、NPO・NGOでの経験や、ソーシャルベンチャーを支援する中間支援組織のパートナーとして伴走した経験から、困っている人への支援を行き渡らせる難しさや、その『仕組みづくり』の必要性を痛感していました。また民間IT業界で社会課題の解決のための事業をつくってきた背景から、社会課題の解決を単なるアイデアで終わらせず、いかに社会の『当たり前』として根本的な解決へとつなげていくかに強い関心がありました。
熱量あふれる社会起業家に寄り添い、事業の成長をともに模索する中で確信したのは、ソーシャルセクターには社会を変える革新的なアイデアと、強い当事者意識があふれているということです。しかし同時に、深く関われば関わるほど「個人の想いや単一組織のリソースだけでは越えられない、構造的な壁」にも突き当たるようになったのです。
立ち塞がる「社会の前提ルール」
民間・ソーシャルセクターの強みは、課題に対して素早くアプローチし、アイデアを検証・実行に移せる機動力にあります。しかし、どれほど優れたソリューションや手厚い伴走であっても、それが社会全体の「当たり前」として広がっていく過程では、必ず社会制度・予算・行政のインフラといった「大きなルール」の壁にぶつかります。
手厚い支援も、特定個人のコミットメントや単一組織のリソースに依存している限り、広がりや持続性には限界があります。「社会課題を本当の意味で解決し、一過性のムーブメントで終わらせず持続可能な仕組みとして定着させるには、何が足りないのか?」
その答えを探す中で行き着いたのが、「行政という基盤」の圧倒的な存在感でした。
最前線で挑む若い首長たちから受けた刺激
さらにその想いを決定づけたのが、日本GR協会が事務局支援を行なっている「全国若手町村長会」(https://www.young-mayor.net/about/)での事務局支援リーダーとしての活動です。
49歳までに当選し、人口減少や少子高齢化というまさに「日本の課題の最前線」で、地域の未来を切り拓こうとする若手町村長たち。若手首長らと接する中で、私自身、大きな衝撃と刺激を受けました。

2023年11月の「全国若手町村長会 設立総会」の様子。私も設立時から事務局支援リーダーとして関わっています。
参考:https://www.young-mayor.net/kickoff_meeting/
当事者としての強い危機感を持ち、リスクを取って前例のない挑戦に飛び込む若い首長たちの姿。そこには、単なる「行政の運用」を超えて、地域住民の幸せのために制度や構造そのものをより良く変えていこうとする強い覚悟がありました。
「志を持つ民間・ソーシャルセクターの熱量」と、「地域を背負い、枠組みを変えようとする行政のリーダーシップ」。この両者が本気で手を取り合ったとき、社会課題解決のスピードとインパクトは爆発的に跳ね上がる ーーーその確信は私の中で揺るぎないものとなりました。
社会の「標準インフラ」としての行政の力
行政は、時に手続きの煩雑さやスピード感が課題とされることもあります。しかし、裏を返せば、一度制度や予算として組み込まれた施策は、「誰に対しても平等に」「長期的かつ安定的に」届くという、民間には真似できない強力なインフラを持っています。
- スケール(波及力): 一地域や一団体の成功事例を政策や制度に組み込むことで、数万人〜数百万人規模へも一気に普及できる。
- サステナビリティ(持続性): 支援者のボランティア精神や特定の人物の熱量に依存せず、社会のルール標準として機能させることができる。
- 公平性・信頼性: 公共のインフラとして位置づけることで、支援の手から漏れ落ちがちな当事者にも広く届けることができる。
現場での「点」の伴走支援を、社会全体の「面」へと広げるための土台こそが、行政の政策・予算・制度に他なりません。
三つのセクターをなめらかに繋ぐ「トライセクター・リーダー」という存在
では、民間・ソーシャルセクターのアイデアや現場での取り組みを、どうやって行政の基盤と接続すればよいのでしょうか。
ここで鍵となるのが、ビジネス(民間企業)、パブリック(政治・行政)、ソーシャル(NPO・非営利)の3つのセクターの垣根を越えて課題解決を牽引する「トライセクター・リーダー」の視点です。
3つのセクターは、それぞれ異なる「言語」と「インセンティブ」で動いています。
- ビジネス: 限られたリソースを最適に分配し、事業の発展やスピードを追求する
- パブリック: 公益性と公平性を守り、持続可能な政策・制度の枠組みをつくる
- ソーシャル: 現場の当事者目線に立ち、使命(ミッション)の実現を最優先する
異なるロジックを持つセクター同士がそのまま対峙しても、噛み合わないことやすれ違いが生じるのは当然です。だからこそ、それぞれのセクターの構造や思想を理解し、通訳者として「共創の場」を生み出せる存在が求められています。

「トライセクター」のイメージ図
参考:http://atcafe-media.com/2014/04/15/tri-sector-leader/
さらに言えば、地域社会でこのトライセクターによる共創を真に根づかせるためには、専門的知見をもたらす大学・研究機関、地域生活を支える自治会・民生委員等の地域コミュニティ、農協・生協などの協同組合、そして市民個人といった現場のキープレイヤーたちを巻き込み、連携の輪を広げていく視点も欠かせません。
「GR」とは、トライセクターな知見を結集させるアプローチ
この「トライセクター・リーダー」としての視点と動きを具体化するアプローチの一つが、GR(Government Relations)なのだと私は捉えています。
GRとは、単なる行政への「一方的な売り込み」ではありません。 行政が抱える制度上の制約や現場の課題を深く理解した上で、ソーシャルセクターや民間企業が現場で培った知見・ソリューションを「政策・事業の共創案」として提示し、対話を重ねていく技術だと考えています。
現場の声を、一過性の支援や局所的な運動で終わらせないために、民間・ソーシャル・行政の壁を飛び越え、社会の仕組みそのものを変えていく。その橋渡しとなる「GR」の実践こそが、これからの時代に必要不可欠だと確信しています。
おわりに
ソーシャルでの伴走体験、民間でのビジネス経験、全国若手町村長会や自治体をはじめとするパブリックの現場に関わる立場として、セクターの境界線を越えた「共創」を進めながら、これからも社会課題の解決を「点」から「面」へと広げるトライセクターな実践者であり続けたいと考えています。
次回は、ゴジローにバトンをお渡しします。ゴジローならではの「私とGR」のお話を、楽しみにしています!
投稿者プロフィール

- (一社)日本GR協会 チーフGRオフィサー
-
日本GR協会では、官と民が連携して課題解決に向き合う取組を発信・普及させていくことを目指し、GR勉強会チームリーダー(2021年)、GRサミット企画・運営(2022年)、全国若手町村長会事務局支援チームリーダー(2023年~)などを担当。
民間企業に所属しながら、NPOの運営や組織基盤作りに従事した経験あり。アフリカの孤児支援を行う団体や、アジアの途上国でICTによる教育支援をする団体など社会課題に取り組むソーシャル・ベンチャーと伴走する活動を行った。
本業では行政や自治体のDXを推進する仕事をしており、民間・行政・地域といったセクターを超えた「繋がり」による課題解決を目指している。
2022年夏に広島県へ地方移住。瀬戸内海の多島美を眺めながら、海が近くにある暮らしを満喫している。
最新の投稿
お知らせ2026年9月4日全国若手町村長会 全国青年市長会と共同で内閣総理大臣を訪問
お知らせ2026年8月14日【私とGR】官と民の境界を越えた「共創」を目指して——社会課題解決を「点で終わらせない」ために
お知らせ2026年4月17日セッション4(スポンサーセッション):自治体DX〜事務をこなす自治体から、価値を創る自治体へ〜|第7回日本GRサミット
お知らせ2023年12月4日全国若手町村長会 設立総会を開催
