トークセッション「受賞者による未来創造 〜官民連携が切り拓く未来〜」|第7回日本GRサミット・第4回GR_官民連携アワード受賞式
第7回GRサミット、最初のプログラムは、『GR官民連携アワード』表彰と受賞者によるトークセッションでした。
地域課題解決の好事例からエッセンスを学び、それを全国に向けて発信していく機会を作ることで、地域の課題解決促進の一助となることを目的とし、2021年からスタートしたのが『GR_官民連携アワード』です。
表彰の評価基準として『目的達成(地域課題の解決に資する事業か否か)』『独自性(当該地域ならではの工夫があるか)』『三方良し(行政、民間、地域、いずれも恩恵があるか)』『持続性(行政年度終了後も地域に根付いているか)』に加え、今回は『未来創造度』(今までやってなかったことをやっているか)を付け加えました。
応募総数、60事例(自薦・他薦含む)の中から、日本GR協会のGRオフィサー(GRの専門家)8名による第一次審査を経て、10の事例に絞ったのち、日本GR協会全体会にて最優秀賞・優秀賞の3事例を選出しました。
受賞者紹介
| プロジェクト名 | 受賞者 | 詳細 | |
| 最優秀賞 | 陸前高田市担い手創出プログラム事業 | 認定NPO法人SET | http://1week.set-change-maker-program.com/ |
| 優秀賞 | むなかた子ども大学 | 福岡県宗像市教育委員会 | https://munakata-kids-unv.jp/ |
| 優秀賞 | 全国でのビーチのユニバーサルデザイン化による日本の海の価値向上 | NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト | https://sumauniversalbeach.com/index.html |
※表彰された皆さま
登壇者紹介
石渡 博之 認定NPO法人SET 副理事長(最優秀賞:陸前高田市担い手創出プログラム事業)

毛利 拓也 福岡県宗像市教育委員会 主幹指導主事(優秀賞 :むなかた子ども大学)

土原 翔吾 NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト 理事(優秀賞 :全国でのビーチのユニバーサルデザイン化による日本の海の価値向上)

モデレーター:亀田 年保 (一社)日本GR協会 チーフGRオフィサー

トークセッション概要
まず、受賞された三団体から、それぞれの事例について5分程度、プレゼンしていただき、トークセッションに入りました。
このセッションの登壇者は、GRの最前線で働く方々です。より現場に近い目線で、実際に苦労されたことや、どのように壁を乗り越えたか等の体験談をもとに、今回のテーマでもある「未来創造」という視点もあわせて、これからの展望などをお話しいただきました。

① 陸前高田市の関係人口創出(石田氏)
東日本大震災を契機に大学生が立ち上げたこの取り組みは、現地との関係性を築きながら継続的な活動へと発展、2013年には法人化された。
活動の軸は、「人口減少をネガティブに捉えるのではなく、減少社会だからこそ生まれる価値をどう創るか」という視点である。特に重視しているのは、地域住民と外部の若者との交流から生まれる変化や成長といった、数値では測れない関係性の価値である。
若者にとっては、地域に関わることで「自分の役割」や「必要とされる実感」を得る機会となり、都市生活では得られない自己発見にも繋がる。一方で地域側にとっても、外からの関わりが刺激となり、町へのさらなる愛着や活力が生まれるという。
しかし、こうした活動は当初理解されにくく、地域住民からも「長くは続かない存在」と見られるなど、信頼を得るまでには時間を要した。また行政に対しても、若者の流入がどのような価値を生むのかを説明することは難しく、連携に至るまでには長いプロセスがあった。
転機となったのは、行政担当者が現場で実際に若者一人ひとりの活動を目にしたことであった。参加した若者一人一人の動機やストーリーに触れることで絆が生まれ、連携へと発展した。さらに行政職員がNPOの現場に一定期間入るプログラムも実施されるようになった。
今後は15年間の活動をまとめた書籍の出版を予定しており、関係人口や地域活動に関わる人々に対して、経験や価値を共有していくことを目指している。
② むなかた子ども大学 (官民連携、総がかりで子どもたちの「志」を育む)(毛利氏・島田氏)
福岡県宗像市の「子ども大学」は、「夢と志を持った子どもの育成」を目的に、行政・企業・大学・地域が連携して実施している教育プログラムである。学校教育だけでは補いきれない実社会との接点を提供し、「本物の体験」を通じて子どもたちのキャリア観や主体性を育むことを目指している。
取り組みは主に4つの柱で構成されている。年1回の大規模イベント「メインキャンパス」、年間を通じて実施される「特設講座」、市内すべての小学校で行う体験型授業「子ども大学の日」、そして「夏休みの課外授業」である。企業や地域の大人が講師となり、子どもたちが多様な職業や価値観に触れる機会を提供している。
特徴的なのは、「総がかりで子どもを育てる」という思想であり、教育を学校だけに閉じず、地域全体の役割として捉えている点である。企業も単なる協力者ではなく、教育の担い手として関わる構造になっている。
一方で運営上の課題も存在する。特に企業側の中には、自社PRの場として関わろうとするケースもあり、「子どものためのキャリア教育」という本来の目的とのズレを調整する必要がある。このため、理念の共有や目的の明確化が重要なポイントとなっている。
予算面では、講師謝礼はほとんどなし(交通費程度)、主に「メインキャンパス」の会場費に充てられ、全体運営費が年間約650万円と低額に抑えられている。多くの協力者の共感と善意によって支えられている。

宗像市教育部教育総務課 地域教育連携室 島田徹成氏が運営上の課題について説明してくれた。
本取り組みは短期的な成果を求めるものではなく、5年後、10年後、さらには20年後の地域を担う人材育成という長期視点に立っている。子どもたちが将来地域に戻るかどうかにかかわらず、「志を持った人材」を育てること自体が地域の価値になるという考え方が根底にある。
③ 須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(土屋氏)
ユニバーサルビーチプロジェクトは、専用のビーチマットや水陸両用車イスなどを活用して、これまでなかなか海に触れることのできなかった、障害のある人や高齢者などに、海辺での体験機会を提供する取り組み。「みんなの『できない』を、『できた』に変える」をコンセプトに掲げ、単なる福祉支援ではなく、参加した方やその家族が、「体験を通じた人生の変化」によって、そこから進学や社会参加など新たな一歩に繋がることを目指している。これまでに100件以上の変化の事例が生まれている。
立ち上げ当初は「危険ではないか」「なぜそこまでやるのか」といった心配の声もあったが、実績を積み重ねる中で理解が広がり、現在では全国33都道府県62カ所で活動を展開している。さらに地域ごとに「兄弟プロジェクト」として拠点が生まれ、自治体や企業(神戸製鋼・ネスレなど)との連携も進んでいる。こうした連携のポイントは、資料や説明ではなく「現場を見てもらうこと」にある。実際に体験を目の当たりにすることで、共感が生まれ、支援者や仲間が増えていく。
今後はユニバーサルビーチにとどまらず、ユニバーサルツーリズムや地域観光へと領域を拡大し、誰もが自然や地域を楽しめる社会の実現を目指している。

まとめ(議論のポイント)
- 官民連携の本質は「制度」ではなく「現場での共感」
- 数値では測れない「関係性の価値」が地域づくりの核心
- 地域外の人材(関係人口)が、地域と個人双方に変化をもたらす
- 信頼構築には時間がかかるが、継続が最大の力になる
- 行政は「理解する側」から「共に動く側」へ変化する必要がある
- 現場体験(視察・参加)が連携の起点になる
- 教育は短期成果ではなく、長期視点での“種まき”が重要
- 福祉・教育・観光など分野横断型の取り組みが価値を生む
- 地域ごとに状況が異なるため、モデルの横展開にはカスタマイズが必要
- 人口減少は課題であると同時に、新しい価値創出の機会でもある
- 最終的に地域の未来をつくるのは「人と人のつながり」

投稿者プロフィール

- (一社)日本GR協会 チーフGRオフィサー
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新卒で讀賣テレビ放送株式会社に入社。大阪本社での営業部門ではスポンサー・広告会社へのテレビ営業活動。スポーツ部門では野球・ゴルフ・サッカーほかスポーツ中継、バレーボール・大相撲ほかイベントプロデュースを担当。東京支社転勤後はコンテンツ部門にて、アニメ・ドラマ・バラエティーのマルチユース展開、IT戦略を担当。また、IT戦略子会社の創業メンバーとして、3年間、役員を歴任。
50歳を機に28年勤務した読売テレビを退職し、ふるさと尾道にUターン。「人と人、心と心、地域と地域をつなぎ、新たな価値を創造することで、社会に貢献し、世界平和を目指す」という理念を掲げ『つなぐ和』を創業。尾道映画祭ほかイベントプロデュース、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進、ECサイト立ち上げ、アニメのキャラクタービジネス展開ほか、数多くのプロジェクトに携わる。また、尾道ライオンズクラブ、NPOプラットフォーム・おのみち、尾道市立大学「地域プレゼンテーション課題」ブラッシュアップアドバイザーなど、地域のボランティア活動にも積極的に参加している。
2023年4月尾道市長選挙に立候補。28,414票を獲得するも303票差で現職候補に敗れるが、現在も「尾道から日本をよくする」という想いを胸に、活動を続けている。
広島県出身 尾道市在住
関西大学法学部卒業
早稲田大学大学院商学研究科(早稲田大学ビジネススクール)卒業 MBA取得


